■ Forever Smile ■


「………と、いうことが今日あってね」
「そうか」
「『そうか』って…もう冷たいなぁ」
「……」
「ああ、サニーちゃんに余計な事を吹き込んだ口軽な輩の察しはついてるよ……ま、近いうちそれなりの報いは受けるだろうがね…フフフ♪」
「派手な真似はするな」
「やっだなぁ〜『心優しいセルバンテスおじちゃま』がいったい何をすると言うんだい?」
「フン……それより貴様こそサニーに余計な事を喋っていないだろうな」
「失礼だねェ…この私が盟友である君の不利益になるようなことを話すと思うかい?(なーんて『目玉焼き事件』のことは多少大袈裟に脚色して話たけどさ〜♪)」
「……フン」
「ところでアルベルト」
「何だ?」
「いつまでサニーちゃんを樊端に預けておくつもり?」
「……」
「サニーちゃんもそろそろ回りが見えてくる年齢だよ。いくら樊端が大切に育てているとはいえ父親である君が滅多に姿を見せないから不安になる…不安だからあんな心ない噂話をも本気にしてしまうんだ」
「……」
「今すぐにどうしろとは言わないけど……そうだ!ね、明日二人でサニーちゃんのところに行こうよ♪ね、行こ♪ハイ決定〜♪」
「断る」
「ア〜ルベ〜ルトォ〜」
「サニーとは親子の縁を切った…儂には関係ない」
「アルベルト…君はまだそんなことを……いくら『親子の縁』を切ったと言っても『血の繋がり』までは切れないよ」
「煩い!」
「でもこのままじゃサニーちゃんが可哀相じゃないか!」
「煩いッ!!」
「アルベルトッ!!」
「…煩い…貴様に……貴様に何がわかる!!」

「…………何が……『何がわかる』か…だって?」

「アルベルト…君がどんな想いでサニーちゃんを…」
「……何が言いたい」
「それがわからない私だとでも思うのか!?見損なわないでくれたまえ!」
「!!」

「君は、君は今でも忘れられないんだろう!今も…今私と居るこの時でさえも君の心の中にはずっとあの時の彼女が存在しているんだ!だから!」
「黙れ!」
「だからサニーを手放したんだろう!サニーを見る度に君はあの時の事を思い出さずにはいられない!!だからサニーを」
「サニーに罪はないッ!!」
「そうだよサニーには何の罪はない!……罪があるのはあの女の方だ!」
「セルバンテス!」


「そうだよ……悪いのは全部あの女だ……何で…何で君の目の前で死ぬんだよ…何であんな幸福そうな顔して死ねるんだよ?……あんな死に顔されたら…君、忘れられるわけ無いじゃないか」
「……」
「狡い……」
「………」
「……狡いよ…」
「………」
「『後はお任せ致します』だって?……お任せされたって……私に…私に何が出来るっていうんだよ?」
「セルバンテス……」


「…ねェ…どうしたらその苦しみから君を救える?……君のこの胸を斬り裂いてこの中に住む彼女を引きずり出して…殺してやればいい?……ねェ?」
「セルバンテス!!」
「だって!……だってそうだろう?……死んだ後でも君の中で生き続ける彼女が……君を苦しめ続けるあの女が私は憎いんだ!この手で跡形もなくズタズタに斬り刻んで…君の中から消し去りたいよッ!!」
「……」
「……出来やしない…………勝手なこと言い遺して勝手に死んで…私に何が出来るっていうんだよ!君に……何も出来やしないじゃないか」
「……セルバンテス」
「ホント…嫌な女……」
「……」
「……大…嫌いだ……」


「……セルバンテス」
「……」
「……すまん」
「……何で謝るのさ」
「………」
「何で君が謝るのさ」
「すまん」
「君が謝ることじゃないだろう!」
「………」

「……ゴメン」
「……」
「……ゴメン悪かった……言い過ぎたよ…………ゴメンなさい………」
「……フ」
「そこ、笑うとこじゃない」
「『嫌な女』、か」
「だからゴメン!言い過ぎたってば!」
「……確かにな」
「え?」
「よりによってお前に後を任せるなど」
「…ちょ、それ失礼じゃない?私に!?」
「……すまん」
「だから君が謝ることじゃ…」
「全ては儂が負うべきことだった」
「……アルベルト?」


「あの時…儂は…ただ見ているだけしか出来なかった……お前の言う通りだ、儂は今でも忘れられない」
「……」
「初めてサニーを抱いた時…あいつの託した命の重さに戸惑いながらも嬉しかった…だがサニーを見る度にあの時の事を思い出す……あいつに対して何ひとつしてやれなかったふがいない自分を…だからサニーを手放した」
「……」
「……逃げていたんだ」
「…………アル…」
「あいつはわかっていたんだろうな………だから儂ではなくお前に『後』を任せた」
「……」
「嫌な女だ……」
「…アルベルト…ゴメン…君にそんなこと言わせるつもりじゃ」
「セルバンテス……」
「ん?」

「生者が死者に対して何が出来る…死者に語る術など無い、弔いの言葉も懺悔も、まして文句のひとつ言ったところで届きはしない」
「……」
「それでも遺された者は生きて行かねばならん…後悔の念を抱きながらもな」
「……」
「なぁ…セルバンテス」
「……そうだね」


「……サニーのことは…善処する」
「ホント!?」
「いや…すぐには無理だ…が…その……たまに顔を出す…くらいなら…」
「いいよ、それでも!…サニーちゃん喜ぶよ♪」
「…そうか?」
「そうだよ♪」
「…そうか」
「そうだよ」

「……お前には感謝している」
「何だい改まって?」
「お前は儂に『何も出来やしない』と言ったが…お前という存在に儂は救われる」
「……アルベルト」


「儂にはお前が必要だ」


「……あ………ぁ…」
「?どうしたセルバンテス?……?顔が赤いぞ?」
「…こッ……殺し文句だ…よ……」
「何が?」
「それ!」
「どれ?」
「どれ?ってソレ!」
「ソレ?」
「ぅ〜〜ぁあ〜〜!!もうこの天然ッ!!」
「は?」
「わかんないならもういいよ!!」
「おい、セルバンテス?」
「か、帰る!とにかく明日サニーちゃんのとこ行くから君も一緒に来るんだよ!いいね!『善処する』んだろ!!約束したからね!!」
「帰る?…おい、お前が持ってきたこの酒は呑まんのか?」
「呑めるわけないだろう!!これ以上私を酔わせてどうしようっていうんだい!せ、責任持てないよ!ホントにもう!!」
「は?」
「…も…ホント…君って…!!」
「何なんだ???」


「嫌な男だよッ!!」


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