真っ白な雪が、後から後から、どんどんどんどん降ってくる。
寒い……。ものすごーく。
もう、爪先の感覚がなくなってしまったよ。冷たすぎて。
よく降るなぁ。どういうつもりだよ、まったく。ここは南極か!?
アルベルトは、後ろのビルへ消えたっきり、まだ戻ってこない。
「待たなくていい。先に帰っておれ」
そう言ったけど、この雪だよ! 独りで帰れと言うのかね。そんなの淋しいじゃあないか。本当に君って奴は、相変わらず冷たいねぇ。この雪みたいにさ。
「はーっくしょい!!」
ずる……。
あー。もう! 鼻水出て来たよ。
私は超二枚目でバリバリのやり手社長だっていうのに。格好悪いったらないじゃないか。
うううう……。さむさむ……。
じっとしてられないよ。
ああ……歯の根も合わなくなってきたよ。
私は南国の人なんだよ。寒いのは大嫌いなんだよ。
うっわぁー。すご。ヒゲが凍ってるよ。今、氷点下?
寒い……なぁ……。
雪は、まだ、やみそうにない。
いつまで待つんだろう、私は。
ふと、ビルを見上げてみた。
灯りのついた窓が、四つ……五つ……。
どの窓にも人影。
何処にいるのかな? 上から私は見えているのかい?
早く戻って来いよ、アルベルト。
私がここで待っているんだからさ。
ずっと、ずーっと、待ってるんだからさぁ。



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