今日「テレビ大捜査線」という本を買った。著者は君塚良一。 そう、言わずと知れた「踊る大捜査線」の脚本家だ。 タイトルからも推測できると思うが、「踊る大捜査線」を含む、彼の関わったドラマを脚本家の目から見た制作裏話が綴られている。 客寄せのつもりなのか素なのか、第一章からいきなり「踊る大捜査線」について語られていた。 私は三、四ページ読んだだけで即買いしてしまった。 ハードカバーの本だからけっこう高かった。 でも、後悔はしていない。 まだ十分の一ぐらいしか読んでいないが、ここまてで既に一カ所、私をもんどり打たせるほど嬉しい記述があったからだ。 うちにお越しのみなさんは、「踊る大捜査線」に実はもう一つのストーリーが用意されていたことは、私が言うまでもなくご存じのことと思う。 ラブストーリーという展開だ。 青島と雪乃さん、室井とすみれさんの。 第一話の視聴率がべらぼうに悪かったら、五話以降はこの二組の恋愛模様が描かれる用意があったのだ。 しかし、実際は一話の視聴率は大変微妙な十八パーセントというものだった。 通常、テレビドラマは十六パーセントとれれば御の字と言われているらしい。 十八。微妙な数字である。 合格ラインは超えているが、左団扇と言うほどではない。 しかも、この作品のプロデューサー亀某氏はこの少し前に、浜辺でラブラブのトレンディドラマでひとやま当てたばかりである。 十八なんて数字は、ちゃんちゃら可笑しくてヘソで茶が十も二十も沸いてしまうかもしれない。 もちろんこの感想は私の憶測である。 それが証拠に「踊る大捜査線」は恋愛ドラマにはならなかった。 亀氏は私などのような凡庸な人間には遠く及ばぬほどの敏腕天才名プロデューサーだったのだ。 なにがどうなって微妙な視聴率なのにラブラブはなしになったのかは、「テレビ大捜査線」に詳しく記してあるので割愛する。 詳細を知りたい方は是非この本を購入されることをお勧めする。 そうして「踊る」は我々の知る、前代未聞の奇跡の刑事ドラマとあいなった。 しかし、脚本家の手元には描かれなかった裏のストーリーが未だ残っていたのだ。 君塚氏はその一部をこの本に抜粋してくださった。 著作権法上大変問題のある行為とは承知の上だが、私の感動を少しでもリアルに伝えたいので、敢えてここにそれを引用する。 まずかろうと思し召しになられても、チクらないでいただきたい。 まあ、チクられても悪いのは私なのだから、それなりの覚悟はできていなくもないが、あくまで「それなり」なので、ばれない方が嬉しい。
○走る室井の車の中(夜) 運転する室井(柳葉俊郎)と、助手席のすみれ(深津絵里)。 少し緊張している室井の顔。 すみれは誘われたことに戸惑っている。 彼女は窓の外に目を向けたまま呟く。 すみれ「……何か、裏あるの?」 室井 「? (と目を向ける)」 すみれ「だって、キャリアのあなたが送ってくれるなんて」 室井 「……家の方向が一緒だからだ」 すみれ「(探るように見る)」 室井 「(怒ったように)それだけだ」 すみれ「……そ……」 二人、言葉の接ぎ穂がなくなる。 すみれ「音楽とかないわけ?」 室井 「え?」 すみれ「音楽。ドライブには音楽でしょ」 室井 「……そうか……」 室井、カセットテープを取る。 すみれ「何聞かせてくれるのかな」 室井 「……小室は好きか?」 すみれ「小室哲哉?」 室井 「……小室等だ」 聞こえてくる小室等の七十年代のフォークソング。 すみれ「……何、これ」 室井 「……いい曲だ……」 すみれ「……」 古いフォークソングに、白けるすみれの顔。 真面目な顔で聞いている室井。 すみれ、その顔をチラッと見やり、 すみれ「(笑ってしまう)」
なんですかぁ!? これぇ!?
はっきり言って打ち抜かれた。 何にかは判らない。 が、ここを読んで、ことに小室哲哉ノットイコール小室等のくだりでは、比喩ではなく「ひゃっほう!!」と叫んでいた。まったく近所迷惑な話だが。
室井さん、むっちゃくちゃオヤジじゃないですか。
脚本家自らが室井=オヤジと見なしている。 描かれなかったストーリーだから、ないに等しいエピソードではあるが、既にキャラクターの性格は固定している状態での会話であるから、別のシチュエーション、例えば助手席に座っているのが青島だった場合(同人誌じゃねーんだから、そんなことは室井×すみれ以上にあり得ないが)でも、君塚氏的には室井は小室等ファンなのだと推測できる。 実のところ今までは、「室井さんはオヤジだ」とほざいてはいても、本編中でそれらしい表現がされていなかったので、その説は私の妄想かもしれないと自信がなかったのだ。 だが、ほとんど「踊る」の原作者と言っていい君塚良一氏が、こうして婉曲にではあるが「室井慎次はオヤジである」と肯定しているのだ。 私の見解は間違っていなかった。 だとしたら、「私が刑事に〜」で描いた、室井慎次は若大将ファンというのにも信憑性がでてくるじゃないか。 世代は間違ってはいまい。小室等だぞ。六文銭だぞ。私は聴いたことないけれど。 思わず小室等のファンサイトを検索かけてしまいそうになるほど嬉しい設定だ。 買ってよかった。 なんて良い本を書いてくれたんだ、君塚さん。 ブラボー、ハラショー、ワンダホー!! お礼にこの本のことを宣伝しまくろうと思います、ツタヤのアルバイターとして。 明日にもこの本を目立つ場所に平積みにし、特大POPを付けましょう。文芸は私の管轄じゃないけれど。 そんな誓いを立ててしまうほど素晴らしい本だ、これは。 だから、ここを読んだあなた。 あなたも、是非是非この本を読んで欲しい。もちろんちゃんと買って。立ち読みはダメよ。 もっとも「踊る」フリークには美味しいことだらけで、とても立ち読みは無理だと思うけれど。
2001年07月10日(火) |
青島徒然草〜プリンプリン物語〜 |
室井さんちの近所のコンビニに新しい自販機が導入された。 メーカーはポッカ。 俺って新しいもん好きなんだよね。 これで何か一本買って帰るか。 ……?
なんじゃあこりゃああああ!!<ジーパン調
ぷ、ぷ、ぷ、プリンシェイクぅぅぅぅ!? プリンって飲み物だったのか!? 俺、今まで間違ってたの? やっぱり室井さんが正しいわけ? ……。 おちけつ、いや、落ち着け、俺。 と、とにかく買ってみよう、これを。
そして早くうち帰って飲んでみよう、ストローで。
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